「化粧水はほぼ水」「化粧品は原価率がとても低い」というような事を耳にしたことはありませんか。
この記事では、化粧品の製造メーカーに勤めている私だからこそ知っている化粧品の原価について説明したいと思います。
化粧品の原価を構成する要素
化粧品の価格を構成するのは、主に下記の3要素です。
①中身原材料
②容器やパッケージなどの資材
③人件費
これらの要素に輸送費や広告宣伝費、化粧品メーカーや代理店等の利益などが加算されて、最終的な販売価格となります。
気になる中身原価は
それでは、価格を構成する3要素の中で、1番高いのはどれだか分かりますか。
化粧品の種類や内容量、仕様等にもよりますが、容器やパッケージなどの資材が高くなることが多いです。
特に、化粧水などの液状の製品だとそれが顕著です。
化粧水のパッケージなどに記載されている全成分表示で、1番先頭は基本的に「水」となっていることが多いです。
化粧品の全成分表示は、配合量の多い順に記載することが義務付けられていますので、成分の中で水がもっとも多く使用されていることが分かります。
そこに、とろみをつける成分や機能性成分、安定化成分が配合されて化粧水となります。
ほとんどが「水」なので、原価は極めて安いのです。必要最低限の成分だけで製造すれば、中身原価は数十円に抑えることも可能です。
反対に、容器やパッケージなどの資材原価は、製造国や購入する数量、仕様(容器に着色や印刷をするのかの条件)によっても異なりますが、想像より高いです。
大手メーカーの原価
上場企業のおおよその原価率は決算書を見ると分かります。
たとえば、資生堂の有価証券報告書を見てみると、2022年の製造原価は30.3%でした。
各製造業者の売上高に対しての製造原価の割合の中央値は約70%なので、化粧品の製造原価がかなり低いことが分かります。
化粧品は利益率が高いのか
では、化粧品会社は低い原価で製造したものを高く販売して暴利をむさぼっているのかというと、そういうわけではありません。
化粧品は販売するために特別な許可は不要なため、さまざまな会社が参入しているので広告費をかけないと売れないのです。
そのため、化粧品業界は広告宣伝費がほかの業界よりかなり高くついてしまいます。
テレビCMで有名な女優を起用したり、店頭でも良い位置に商品を置いてもらえるように華やかな什器を設置したりと各化粧品会社は必死なのです。
だから、製造原価が低いからといって、決して利益率が高いわけではないのです。
まとめ
「化粧水はほぼ水」「化粧品は原価率がとても低い」と言われれば、それは本当です。
でも、原材料以外の人件費や広告宣伝費など、さまざまな費用がかさむことを分かっていただけたと思います。
容器や広告の華やかなイメージだけで選ぶのではなく、パッケージに書かれている中身の成分を見て、自身の肌に合ったものを選ぶのがおススメです。
化粧品の全成分表示を読み解くには、「化粧品成分検定」という資格取得もおすすめなので、もし良かったら、こちらの記事も読んでみてください。